アルプス電気株式会社
選定の決め手となったのは、小コードサイズを実現するコンパイラ性能、AUTOSAR対応実績および充実したサポート体制
アルプス電気株式会社(以下、アルプス電気)は、民生・モバイル機器やエネルギー、ヘルスケア、インダストリおよび車載マーケット向けに、単体部品からモジュール製品までの電子部品を開発・製造および販売しているグローバルカンパニーです。
IARシステムズ(以下IAR)は、その中で各プロダクトのソフトウェアおよびアプリケーションの開発を横断的に行っている「ファームウェア技術部」にユーザインタビューを行いました。
ツール選定の決め手
アルプス電気とIARの最初のコンタクトは20年以上前に遡ります。アルプス電気は、当時のMotorola社のマイコンMC68HC11向けコンパイラとしてIARの製品を使用していました。そして2年程前から、再びIARの製品「統合開発環境IAR Embedded Workbench for Arm」をArmプロセッサ搭載製品向けに利用しています。開発ツール選定プロセスは、比較検討をアルプス電気社内で行い、最終的にIARの製品に決定しました。
ツール選定の決め手となったのは、最大で30%程度も小さいコードサイズを実現するコンパイラ性能と、製品価値に見合った高いコストパフォーマンスに加えて、代理店を介さない直接取引およびサポート体制です。アルプス電気の中でArm Cortex-Mアーキテクチャ搭載製品を使用するアプリケーション開発においては、ソフトウェア開発ツール共通化および標準化が実現できるIAR Embedded Workbench for Armは大きく貢献しています。更には、サーバーにプールしてあるライセンスをネットワーク経由で利用できるフローティングライセンスであるネットワークライセンスを活用しており、複数のエンジニアによる開発を効率よく行うことが出来ています。
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Time to Marketを実現するツール
僅か6ヶ月という短期間で開発しなければならなかったのは、自動車のPEPS(パッシブエントリー、パッシブスタート)用の製品でした。システム構成としては、マイコンとBluetooth®通信ICを組込んだ無線モジュールになっており、そのソフトウェア開発に使用したIAR Embedded Workbench for Armが開発期間の短縮に貢献しました。
製品立ち上げまでの期間が6ヶ月という短納期のプロジェクトのため、旧来のマイコンからセキュリティ機能の入ったArmマイコンへの変更およびAUTOSARへの対応をタイムリーに行う必要がありましたが、IARの直接サポート体制も柔軟性があり、結果として、導入から立ち上げまでトラブルなく行えて満足しています。成功の主な理由として以下の4つが挙げられると思います。
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IARのツールは、AUTOSAR / MCALにおいて既に実績があったため、懸案であったAUTOSAR対応OSメーカー向けソフトウェアのコンパイルについては問題無くスムーズに進めることができた。
日本語のドキュメントが予め整備されていて、やりたい内容が直ぐに理解できた。
ツール自体が直観的に使用できる仕様になっているため、初めてのエンジニアでもトラブルなく利用することが出来た。
購入前に無償評価版をダウンロードして使える環境が用意されていたため、予算申請の前に出来ることと出来ないことの見極めが直ぐに行えた。
グローバル対応に貢献するツール
グローバルに製品展開するアルプス電気は、自動車OEMメーカー毎の異なる要求に対応できる柔軟なプラットフォームの構築を行っています。特徴的なのは、モデルベースによるソフトウェア開発手法で、コンパイラの違いに依存せず開発できる体制を敷いていることです。そのため、扱うソフトウェアはソースコードではなくモデル化されたプラットフォーム構造になっており、マイコン変更の際には、固有のドライバ部分だけを変更すれば良いため非常に開発効率が良くなっています。これは、アルプス電気のエンドユーザとなる自動車OEMメーカーやTier-1メーカーへの高品質な製品の提供およびソフトウェア再利用による工数削減にも貢献しています。
ヨーロッパや北米の現地法人で開発の一部を行う際には、知名度も高くてグローバルでサポートを受けられるIARのツールはアドバンテージがあります。また、車載マーケット向けのツールとしても充分知名度があるのでグローバル展開する際にも導入障壁がありません。
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柔軟性のあるライセンスモデル
アルプス電気は、IAR Embedded Workbenchに用意されているライセンスモデルの中で、複数プロジェクトおよび複数エンジニアで利用する際に最適なネットワークライセンスを使用しています。具体的にはBluetoothと車載アプリケーションの2プロジェクトをカバーする方法として、忙しい方のプロジェクトに多くのライセンスを割り振る使い方をしています。
ネットワークライセンスは非常に便利です。ライセンスのチェックアウト(持ち出し)が出来るため、複数プロジェクト間でのリソースの最適化が出来ます。これはコスト効率面から見ても有効な仕組みです。
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今の所IARのツールに改善要求は特にありません。敢えて探すとすると、ネットワークライセンスの管理サーバーの所在地であるデータセンターまで行って、ライセンスマネージャ用のキーとして利用するUSBドングルを挿す行為が面倒だと言われたことはあります。実際あまりにもスムーズに導入できたので拍子抜けしてしまい、そんな事しか思い浮かびませんがご容赦下さい。(笑)